トランプ米政権は日本時間11日、中国からの輸入品2000億ドル(約22兆2000億円)相当の新たな関税対象リスト(6031品目)を発表し、8月30日以降に発効する予定です。既に500億ドル分に25%の関税を課す方針を決定し、6日には340億ドル分に発動をしました。ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は、追加の中国製品に対する関税率は10%になると述べ、新たな対中関税リストについては、2カ月間のパブリックコメント募集期間を経て最終決定するとしました。米政府高官は、中国が不公正貿易慣行や米知的財産権の侵害に関する米政権の懸念に対応しなかったため、米国は新たな関税導入に踏み切らざるを得ないとコメントし、5月に始まった米中間の通商協議で、貿易摩擦解消の打開策は見つからなかったと説明しました。

 11日の日本時間午前の取引で、時間外米株価指数先物は値下がりしました。米中間の貿易摩擦を巡る懸念が再燃したことが背景で、ここ10年で指折りの好決算シーズンに入るとの期待で4営業日続伸していましたが、3%近く上げてきたS&P500種株価指数の上昇の勢いはいったん止まる形となりました。東京株式市場でも、日経平均株価が一時400超安となり、リスクオフムードが漂う展開となりました。

 トランプ大統領が就任して以来、燻り続けていた貿易戦争がついに始まった印象です。中国の覇権を阻むことや米国の貿易赤字を削減することが目的と考えられます。しかしながら、各国では、株価が下落して景況感が悪化し、保護主義に対する警戒感が株式市場に現れ始めた様です。今回のトランプ政権の行動は米国自身にも悪影響を及ぼす可能性が高いと想定されます。既に金融市場に懸念を台頭させ、今後、米国株式市場がより大きく調整局面に入った場合、逆資産効果によって消費が抑制される可能性がでてきます。また、関税が導入された商品では価格が上昇し、物価上昇が家計支出を抑制することも視野に入ります。結果、設備投資の抑制や雇用者報酬の減少につながる可能性も否めません。

 注目されたドル円相場の行方ですが、11日のNY為替市場では約半年ぶりの高値を付けました。11日発表の6月の米卸売物価指数(PPI)が前年同月比で3.4%と上昇したのが大きな要因です。米国の物価上昇は今後も継続されそうで、今後の米金利上昇が意識された面が大きな要因と考えられます。また、米中貿易摩擦の激化懸念から、資源国通貨や新興国通貨が対ドルで大幅に下落したことも円売り・ドル買いを誘発させました。最近の心理的な節目となっていた5月の高値水準を円安ドル高に抜けたことで、円には一段の売りが出やすい地合いとなりました。

 米中摩擦の激化が世界的なリスクオフとなれば経常黒字国の通貨が有利だということは市場では理解されているかと思われます。しかしながら、2018年は警戒段階で円を買う戦略は今年前半の一時期を除いて成功していない現実もあります。摩擦激化で円売り基調がこれ以上強まるとまでは現状では考えにくいものの、当面の円相場はレンジを円安方向に移す公算が大きいかもしれません。