通貨オプションの基礎:価格決定要素について

今日は、いつもと少し趣向を変えて、「通貨オプションの価格」がどう決まるかという点について、簡単に説明したいと思います。

「通貨オプション」とは、決められた日時(満期や権利行使日などと言います)に、決められた価格(行使価格)で為替のスポット取引を行う「権利」という商品です。

例えば、先週満期が来た「行使価格1.1650のEURコール(USDプット)」は、9/12のGMT 14時(日本時間23時)において、EURを1.1650ドルで買う権利でした。生憎この日のEURは1.1650より低かったため権利行使は行わず通貨オプションは消滅しました。

 

通貨オプションについて、どう考えるか

以下は、満期の時の行使価格1.1650のEURコール EUR100,000について、契約がどうなるかを表しています。(プレミアムの支払いは入れていないので損益図とは言えません、こういった図をペイオフ・ダイアグラムと言って、金融機関でオプションを勉強するときに初めにみる図です)

上図を見ると、満期日のスポット価格が行使価格1.1650より低い場合はペイオフが0となっていますが、これは権利行使しないから取引がないことを示しています。通貨オプションは、権利ですからオプションを買っている人は、自分が損をする(上図の場合、1.1650よりスポット価格が低いとき)は権利行使をしません。

ところが、スポット価格が1.1650を超えた場合、権利行使をすると得ですからEUR 100,000の買い@1.1650が発生します。

このように、オプションというのは、「満期の時契約が発生しないという状態」と「スポット取引が発生する状態」という2通りの状態が出てくる可能性がある商品といえます。そのために、オプション取引という商品の価格、つまり「利益が出る場合だけスポット取引を行う」権利の値段は、将来どのぐらいの可能性で、オプション取引を行うと利益を得られるか?という確率的な見通しがとても重要になります。いいかえれば、「将来どのぐらいスポット価格が変動するか」という見通しなのですが、これをボラティリティと言います(詳しくはインプライド・ボラティリティ”Implied Volatility”といいます)。

このボラティリティを加えて、オプション価格は以下の要素によって決定されます。

価格決定要素は、スポット価格、満期までの期間、各通貨の金利、行使価格、そしてボラティリティ(インプライド・ボラティリティ)で決まります。

 

オプションの価格決定についての解説は次回以降に譲るとして、少しだけボラティリティの説明をします。以下の図は、Saxobankが提供しているオプションのボラティリティ情報です。私が知る限り、日々変化するボラティリティの情報を個人がこれだけいろいろと見ることのできるサイトは、ここだけです(英語ですが)。

https://www.tradingfloor.com/tools/fx-options-vols-reversals-risk

ここに出ているのは、横軸にオプション満期までの期間をとり、各通貨ペアをとって、各通貨ペアにおけるオプション満期ごとの行使価格がATM(アット・ザ・マネー)のボラティリティ(インプライド・ボラティリティ)を表示しています。

そのうちとっても詳しいボラティリティの見方を説明したいと思っていますが、今日のところは「大きい値が大きく変動する可能性を持つと市場が見ている」と考えてください。例えば、3か月のところを見ると、EURUSDは7.1%、GBPUSDは9.16%と出ています。両方とも欧州の通貨ですが、英国ポンドはBrexit問題が材料視されて不安定な状態になっていますから、EURよりも大きく動くと考えられているということです。

以下は、EURUSDとGBPUSD、それぞれのボラティリティを使って3か月後のスポット価格の動きをラフに3万回シミュレーションしたものです。それぞれのボラティリティは7.1%と9.16%を使っています。

動きの大きさ度合いをわかりやすくするために、横軸のスケールはGBPもEURも50ポイント刻みで表示しました。

 

 

実はボラティリティは、その期間におけるリターンの年率標準偏差の予想と考えることができます。上記でいえば、EURは3か月のリターンを年率に直すと1標準偏差が±7.1%動くと予想され、GBPではそれが±9.16%とみられているわけです。つまりGBPのほうがEURより1.29倍ほど大きく動くと考えられています。

最近、GBPはBrexit問題で揺れていますが、EURはトルコ問題の影響も少なくなりレンジ相場の様相を呈しています。そのため、欧州通貨とはいえGBPとEURの動きはかなり異なってきていて、二つの通貨のボラティリティの差(スプレッド)は2年ぶりぐらいの大きさに広がっています。

こういったことは、スポット市場のリスクを考えるうえでも非常に重要です。ぜひ参考にしていただければと考えて解説しました。