リスク・リバーサル(RR: Risk Reversal)について(その1)

今回は、2回に分けてインターバンクの取引でよく話題になる「オプションの組み合わせ」商品、リスク・リバーサル(以下RR)を解説します。オプションの売りと買いの組み合わせですので、今のところ個人でやるにはオファーとビッドを使うことになりコスト面からお薦めできませんが、この商品は、将来の為替の方向性を予測するもしくは現時点で市場参加者が感じている為替の方向性リスクをある程度表す指標として、大きな意味を持っています。そのため、簡単な説明を行うことにしました。

私が通貨オプションに関わり始めたのは、日本ではまだ取引されていない1987年(ブラック・マンデーの年)なのですが、この時から割と最近までRRはレンジ・フォワード(Range Forward)と呼ばれており、一般の会社が為替予約の代わりに行う取引として「レンジ型為替予約」というような呼び方をされてもいました。

日本も含め、諸外国で通貨オプション取引が活発になり、オプション担当ではなくスポット取引をしているインターバンクのトレーダーもオプション取引を利用することが一般的になるにつれて、方向性を取り入れたオプション取引の組み合わせ商品としてインターバンクの世界でも一般的に取引されるようになりました。

RRとはどういう取引か

RRとは、単純な取引でOTM(Out of the Money)のプットオプション買い(売り)と同じ程度にOTMのコールオプション売り(買い)の組み合わせです。例えば、現在GBPは英国のEU離脱問題がこじれにこじれており、Brexitの条件によっては将来的に大きくGBPが売られるリスクを感じている方が多いと思います。こういった時に、あらかじめオプションによってGBP下落方向のリスクをとる場合、もっとも単純な方法はGBPプットの買いになります。

単純なGBPプットオプションの買いを行うには、当然プレミアムを払う必要があります。そこで、プレミアムを安くする(場合によっては受け取りにする)ために、「OTM プットオプション買い+OTM コール売り」とするような取引をRRと言います。

実際にどういう取引か見てみましょう。

以下の画面は、10月24日18時54分におけるGBP/USDオプションの取引ボードです。この時のGBP/USDスポットレートは1.2927です。この画面では行使価格1.2700のGBPプットと行使価格1.3300のGBPコールを表示してあります。ここで、満期時点12月19日のオプションに注目してください。プットオプションのデルタが24%、コールオプションのデルタが25%になっています。例えばGBPショートのリスクをとるつもりの人は、1.2700プットを0.01119で購入して1.3300コールを0.00524で売ることになり、GBPロングのリスクを取りたい人は逆に1.2700プットを0.00981で売って1.3300コールを0.00666で買うことで約デルタ25%のRRができます。

 

 

デルタというのは、オプションが権利行使される可能性に近い数字なので、この取引は25%程度の確率で発生するポジションを作っていることになります。

RRとボラティリティ、そして市場の為替リスクについて

さて、皆さんの中には、「同じ程度の確率(約25%)って言っているのに、コールとプットでは結構プレミアムが違うな?」と感じた方がいませんか。そう感じたとすれば、とてもセンスがある方だと思います。このオプション取引には、将来の為替リスクがプレミアムに内包されているのです。

先ほどの取引でいえば、将来GBPを売る方向、つまりGBPプット買い+GBPコール売りでは、ネットでプレミアム0.00595(=0.01119-0.00524)の支払いになっており、逆にGBPプット売り+GBPコール買いではネットでプレミアム0.00315(=0.00981-0.00666) の受け取りになっています。これはなぜかというと、市場参加者がGBPプットのリスクをGBPコールのリスクより大きく見積もっている為です。

ボラティリティというところを見てください。行使価格1.2700プットのボラティリティは10.47%、行使価格1.3300コールのボラティリティは8.85%です。通貨オプションの価格は、このボラティリティの大きさに比例するような(ちゃんと比例するわけではないですがかなり近いです)形で計算されますので、プットオプションが高くなるわけです。

一応、上記の条件でRRをGBP10,000で組んだ時の損益を以下にまとめておきます。

 

プット買いの場合、プレミアム分が持ち出しなので、満期時点のGBPが1.27以上1.33以下の場合プレミアム支払い分59.5ドルの損失になっています。

 

プット売りの場合は、プレミアム分が受け取りなので、満期時点のGBPが1.27以上1.33以下の場合プレミアム受け取り分31.5ドルの利益になります。

このように、RRは将来のどちらの方向のリスクに対してより多く市場がプレミアムを払うか見ることができます。現在、GBPは将来的にGBPが下落するリスクをより強く感じているといえるわけです。(次回はリスク・リバーサルのリスクの見方を紹介します)