オプションのリスク管理について(ベガとデルタ)

先週注目していたGBPですが、メイ首相は、議会の採決予定の11日の前日に、採決の延期を決定してしまいました。

報道によれば、メイ首相がEU側と合意した案では、議会の承認を得られないことがほぼ確定的だったので、仕方がない面もあるかもしれませんが、市場の反応としてはさらに混迷を深める懸念が大きくなったことで、GBPは、一時昨年10月以来の1.25割れとなりました。

EUのトゥスク大統領は、メイ首相の状況をある程度同情するような様子を見せつつも、英国のEU離脱条件については、「再交渉は行わない」とはっきり言明しています。以上のようなことから、先週の状態から比較的長い期間のオプションいついては、ボラティリティはさらに上昇しました。

また、先週のこのレポートでは、1.27近辺だったGBPのスポット価格は、1.25近辺となっています。先週注目した時点では、英国の中央銀行が悲観的なレポートを出したりしたばかりであったので、非常に短期の1週間が17%を付けていることをお話しましたが、現在の状況は、より混迷が長引くというリスクを市場が意識しており、オプション価格を決定するボラティリティは、より長期の満期で上昇しています。

(1週間は、相変わらず非常に高いですが、15%と下がっています)。

 

12月5日との変化でいえば、1か月はほぼ変わらずの13.75%、3ヶ月は13.87%から14.86%へ約1%上昇、6ヶ月から1年までは0.7%程度上昇しています。

オプション取引をボラティリティで見ていない方には、ちょっとわかりにくいかもしれませんが、1年で0.7%上昇するというのは、オプション価格でいえば35ポイント程度の変化があります。例えばGBP50,000のATMのオプションでくらべると、175ドルの差があるということです。

ボラティリティでのリスク(ベガ)について

以前、インターバンクの通貨オプショントレーダーは、通貨オプションをボラティリティで取引すると説明しましたが、このようにボラティリティの動きは、損益に大きな影響を与えます。よく、オプション取引でベガ(Vega)という言葉を聞くと思いますが、ベガとは、ボラティリティが1%上昇した場合の損益変化を示す指標です。インターバンクのオプショントレーダーは、オプションのリスクを測る指標の一つとして、ベガを常に意識しています。そして、ポジションリミットとして、ベガの大きさを与えられます。例えば、

ベガの上限を絶対値で百万ドルとして設定されるということは、オプションを買っている場合は、ボラティリティが1%上昇したときに、百万ドルのが利益が出るポジションを持てることを言います。

方向性のリスク:デルタ

さて、オプションのリスクは、ボラティリティのリスクだけではありません。例えば、USD-JPYについて、1か月満期のATMのUSD コール(JPYプット)を購入すれば、ドルを買う権利ですから、購入後にドルが上昇するとプレミアムは高くなり、ドルが下落するとプレミアムは安くなります。つまり、USDコール買いはドルの上昇方向のポジションとある程度同じと考えられます。

こういった、オプションの対象通貨ペアの方向性のリスクをデルタと言います。

インターバンクのオプショントレーダーは、取引約定時点では、方向性のリスクをとらないことが多いので、ウィズ・デルタ(with delta)といって、デルタのリスクをスポット取引で相殺する取引をくっつけてオプション取引をします。

以前、少し説明しましたが、saxobankでもwith deltaと同じ取引が可能で、オプション取引発注時に「デルタヘッジ」のところにチェックを入れておくと、オプション取引約定後にすぐにポップアップ画面が出て、with delta取引ができます。例えば、USD-JPYが113.40の時、デルタ0.5となっているATMの1か月満期USD コールを10万ドル買えば、デルタヘッジは113.40でUSD50,000売ります。

デルタヘッジは、オプション取引当初の方向性を消す取引で、時間とともにスポット価格も変化します。

上記のポジションをとって、次の日にUSD-JPYが114.00に上昇したりすると、買っているUSDコールのデルタが0.6程度になりますから、デルタはUSD60,000となり、買い持ちがUSD10,000増加します。ここでデルタヘッジをもう一度行ってUSD10,000を114.00で売ってもいいですが、ドルが上昇すると思えば、そのままにしてもいいわけです。このようにオプションは、方向性のリスクも自由に取れます。

そのため、インターバンクのリスク管理では、デルタのポジションも、例えば「絶対値で50百万ドル」が上限というようにリミットをつけリスク管理します。

他にも、ガンマ、セータなどがありますが、別の機会に説明いたします。