今のオプション市場にみる将来のリスク

現在の状況:クレジット市場が脆弱でも足元の米景気はまだしっかり

今週はFOMCが行われています。このレポートを書いている2018年12月19日時点での状況でいえば、ウォールストリート・ジャーナルが18日の社説で”Time for a Fed Pause”、つまりFed(FRBの事です、米国では普通Fedと言います)は、利上げをやめる時だといい、利上げ反対Tweetを連発しているTrump大統領は、「FOMCの連中はWSJを読め」とまで言っています。さらには、有名なヘッジファンド、ダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック氏は17日に、FOMCでは利上げ見送りを決定すべきだといっています。

ロイターやブルームバーグ、そしてWSJが社説で取り上げているのは、それだけ米国の利上げにリスクを感じている市場参加者が多いということなのでしょう。

リスクを見る場合、重要なのは信用リスクを表す債券市場なのですが、米国の状況を簡単に見てみましょう。

17日の終値で米10年債利回りは2.822%、この利回りはDodd plotに喧嘩を売り、利上げというより利下げを織り込んでいるような水準です。ブレークイーブンインフレ率も低下していますし、ハイイールド債の米国債とのスプレッド(OAS:Option Adjusted Spreadといいます、クレジット市場では、リスクを見る場合にとても重要なので覚えてください)は2016年初以来の4.50%超となっています。この利回りスプレッドは、市場に安心感が漂っていた10月の直近最低値3.20%程度だったので、2か月程度で急速に悪化(信用リスクが増大している)わけです。

米国だけじゃなく、来年後半から利上げが予想されているEUでは、指標の5年先のフォワードインフレ率は1.60%近辺で2017年央のレベルまで下がっています。

ところが、経済指標はどうかと言えば、住宅市場や自動車市場に減速がみられますが、来年も企業収益は良好だと予想されていますし、足元のCPIだって2%近辺にいるので、悪くないわけです。当然FEDは利上げをすると思います。そんななかで、ニュースも含め利上げにおびえる今の状況は、異様だと思います。

株式市場は、こういった状況を敏感に感じ取りますから、米国では小型株のRussell 2000が高値から20%以上の下落となり、いわゆるBear Market入りしています。さらには、SP500、Dow、そしてNasdaq指数という主要3指数も直近高値から10%超下落して調整局面です。

当然、株のボラティリティの代表と言えるVIXは上昇しています。株についていえば、以上のような背景がVolatility上昇の要因なので、今後そんな簡単に低下はしないと思います。

通貨オプション市場に内包される将来の方向性のリスク

ちょっと前置きが長くなりましたが、足元の景気と信用市場にみる怯えを踏まえて為替のリスクを見てみたいと思います。

金融取引の基本は、信用です。そのことを考えると、これだけ信用市場にガタが来ている状態では、不安定になると考えています。そして市場でも、ある程度長期ではボラティティが高くなるリスクを意識しています。また方向性としては、円やスイスフランが上昇、GBPは最弱、EUR、AUDもドルに対しては下落方向というイメージをオプション市場は観ているようです。

もちろん、GBPはEU離脱問題、EURは政治的にまとまりがないという個別に大きな問題を抱えていることが影響していますが、上記のイメージは、単純に25-DeltaのRisk Reversalがあらわしているものです。

RRの見方は、以前から取り上げていますが、対円や対スイスの長期のマイナスは、市場の不安の反映といえます。例えば、EURJPYの1yを見るとRRは-2.35%となっています。これはEURJPYが上昇するリスクよりもEURJPYが下落、つまり円高になるリスクが非常に大きく見積もられているということです。

対円だけではなく、スイスフランでもマイナスです。つまり、長期的にはセイフヘブンと言われている円やスイスフランが選好されています。もちろん、実際の動きは、将来にならないとわかりませんが、オプション市場では、円高リスクがかなり強く出ています。

AUDもかなり弱い通貨にみられています。RRにおけるAUDUSDの1yは-1.38%です。これは、AUDコールよりAUDプットのほうが高いことを表しています。つまり、オプション市場はかなり今後のAUD下落リスクを意識しています。もちろん中国との貿易問題が影響しているわけですが、かなり大きく意識されています。