個人の通貨オプション取引の利用について

今回は、個人の通貨オプション取引の利用について、私なりの意見をお話しようと思います。インターバンクのトレーダーと個人のトレーダーでは、ツールや情報量で大きな違いがあり、もちろん市場に参加する方法でも異なっているので、おのずとアプローチに違いが出てきます。saxobankに口座を開けて、実際に取引を行ってみて私が最も利用しやすいと思った方法などを皆さんの参考にしていただければと思います。

 

インターバンクと個人の違い

まず、ごく簡単ですがインターバンクのトレーダーと個人の違いを認識しましょう。インターバンクのトレーダーでもいろいろとありますが、ここでは主に個人のデイトレーダーと同じようにデスクに張り付いて市場を常にウォッチしながら取引をするマーケットメーカーと個人の違いを説明します。

 

ボラティリティ・トレーディング:ストラドル、ストラングル、リスクリバーサル

<ストラドル>

インターバンクの通貨オプショントレーダーは、ボラティリティをまるで通貨や株のような原資産のようにトレーディングします。彼らは、インプライド・ボラティリティ(IV)が上昇すると予測すれば「マイン(買い)」するし、下落すると予想すれば「ヨアーズ(売り)」します。最も多いトレードは短期、特に1ヶ月から3ヶ月のターム物でATM(アット・ザ・マネー)のストラドル(コールとプット両方の組み合わせ)なので、取引時点では為替のリスクであるデルタはほとんどゼロ(デルタ・ニュートラル)です。

<ストラングル>

IVは、同じ期間のオプションでも行使価格によって異なります。通常はATM近辺のボラティリティが最も低く、OTM(アウト・オブ・ザ・マネー)になるほどIVは高くなります。そのため、各行使価格別のリスクをボラティリティ・リスクであるベガで計り、さらにベガかIVの変化によりどう変化するかというリスクであるボルガ(IVによる2回の偏微分になります)を計算して、IVの変化によるガンマのようなリスクを見てポジションを変えます。こういった時に用いられるのは、OTMのストラングルと言って、同じ大きさで反対方向のデルタを持つコールとプット(例えば110円がATMなら108円のドルプット+112円のドルコール、のような)組み合わせの取引です。デルタ25や10のストラングルなどは、標準的な取引に近い取引です。この取引もデルタはほとんどゼロです。

<リスクリバーサル:RR>

IVは通貨ペアのスポット価格が変化しても変化します。基本的にはリスク回避行動に連動する方向の取引がより高いIVとなる方向にあります。ドルに対して円やCHFでは、同じぐらいのデルタを持つOTMのコールとプットを比べると、ドルプットのほうがドルコールより高いですし、Brexitが話題のポンドでは、対ドルではOTMのポンドプットのほうがコールより高くなっています。実は、このIVの行使価格による変化(リスク指標ではバンナと呼ぶのですが)、これをヘッジする商品として存在しているのがリスクリバーサル(RR)という取引なのです。

インターバンクのトレーダーは、このような取引を標準的に常時価格を見て取引してポジションを変えています。

<ボラティリティと期間>

これまでは、行使価格別のIVについての話が主でした。インターバンクトレーダーは、そのうえでボラティリティの期間構造を把握します。ボラティティのリスクベガは、期間が長くなると大きくなりますが、長い期間(満期)のIVは変化が小さいので、1ヶ月のベガと3ヶ月のベガを同じものとしてみるわけにはいきません。そのため、インターバンクのトレーダーはオプション満期の違いを大まかに分けて、期間ごとのボラティリティ・リスクを把握してポジションを変化させます。例えば、短期的にリスクが高くなる市場では、バックワーデ―ションと言って、短期のIVが長期のIVより高い期間構造になります。逆に凪っている相場では、コンタンゴと言って短期のIVが長期のIVより低い状況になります。

こういった性質を踏まえて市場での変化を細かく感じながら、ボラティリティ以外のリスク、時間の変化に対するリスクであるセータ、スポット価格の変化に対するリスクであるデルタ及びガンマ、そういった指標を総合的に見て、インターバンクのトレーダーはボラティリティ・ブックを管理しています。

 

個人で通貨オプショントレードを利用する方法

インターバンクトレーダーと個人の大きな違いは、情報やツールの大きな格差でしょう。勉強すれば、バンナなど少し面倒なものも含めて、リスクの算出はできますが、個人では細かいポジション調整をするための取引ができません。また、インターバンクのトレーダーは、常時オプションのIVの構造を見ることができますが、個人ではお金を払ってBloombergでも入れない限りできません。そのため、個人では取引方法がおのずと変わってきます。ちょっと長くなってしまったので、最も基本的なオプションの利用法を以下に紹介させていただきます。

 

<スポットのヘッジ取引からオプションのガンマトレードへ>

私が最もお薦めする利用方法は、スポットポジションのリスクヘッジです。例えば、ドルショートを112.50あたりで作って保有している個人投資家が、ストップロスを入れる代わりにドルコールを行使価格111円で勝って置く...のようなアプローチです。これがまず最も簡単で安全かつ有効な利用法だと思います。もしターゲットがあるなら、109円行使価格のドルプットを売ってRRの形で持ってもいいですし、買うオプションの元本は大きくしても面白いです。私は、割とこの方法で個人のトレードを楽しんでいます。

購入するオプションお金額をスポットの2倍ぐらいにして、慣れてきたらsaxobankのポジション画面でデルタヘッジをやったり、期間の違うオプションの売買を加えたりして、徐々に様残なリスクになれるのがお薦めです。