昨日はFOMC議事録の公表、メイ首相とユンケル欧州委員長との会談という2つの重要イベントがありましたので、今週はこれらのテーマを扱うこととします。

■FOMC議事録公表

昨日NY後場に1月29/30日に開催されたFOMCの議事録が公表されました。重要な点は「年内の利上げに確信が持てない」、「バランスシートの縮小は年内に停止」と言う2点です。

前々回の12月18/19日FOMC後に米国株が急落したことは記憶に新しいところですが、まず時系列的にNYダウの動きを書きましょう。以下のチャートで、12月19日と1月29日(ピンクの垂直線)も確認しながらどうぞ。

12月19日FOMC前のNYダウ高値は24057.34、FOMC直後に23162.64まで下落、そして12月26日には2018年の安値となった21712.53まで続落しました。このFOMC後の米国株急落を見てパウエルFRB議長はそれまでの方針を明らかに変更したと見られるハト派発言を繰り返すようになります。

そして、1月29日FOMC前のダウは24674.87ドルと既に12月FOMC前の水準を回復しています。つまり、1月のFOMCでは12月の利上げによる株式市場下落とその後の議長発言による株価回復を目の当たりにしてのFOMC開始となったわけですが、FOMCメンバーとしては株価が戻ったからこれまで同様に2019年は2回利上げ予定と考えるタカ派寄りの方針も、あるいは利上げ思惑を後退させることで市場に安心感を与えることも、どちらの選択肢もあったはずです。

ここで1月のFOMCから持ち回りで地区連銀総裁がハト派寄りのメンバーに変わったこと、また前回FOMC直後から米国連邦機関の一部閉鎖が続き、その影響が読みきれないこと。またこれまでの景気減速懸念の最大の原因である米中貿易摩擦の解決には時間がかかりそうであったこと、これらの悪材料を考慮して市場参加者に寄せる議事になったと考えることができます。

昨夜の議事録発表後のCME(シカゴマーカンタイル取引所)におけるFF(フェドファンド=米国政策金利)先物の取引状況を見ると、年末開催の12月FOMC時点での市場参加者による金利織込み度分布は、現状維持が80.9%、利上げが5.0%、利下げが14.1%となっています。現状維持がコンセンサスですが、利上げよりも利下げを見込む向きの方が多くなってきているのが、市場参加者の思惑です。

また、もう一つのバランスシート縮小停止ですが、米国も引き締め政策に転換する前は現在の日銀と同様にQE(量的緩和)を行い、米国債を中心にFRBが債券を購入することで資金を市場に供給する政策を取っていました。そして、その債券購入を停止し、一定期間経過後には満期を迎えた債券に対する再投資をしないことで自然とFRBが持つ債券は減少し、バランスシートが縮小してきたわけです。今回の議事録ではこれまでの再投資をしない流れ(その分の資金が市場から吸い上げられる)から、再投資をする流れ(市場からの資金吸い上げを止める)政策へと年内に転換することが示されました。

全体として想定範囲内ではあるもののハト派的な内容であり、これまでの引き締め状態から中立状態へと政策の変更が行われつつある段階にあることが確認できたと言えるでしょう。

この公表を受けて市場の反応は今のところ限定的ではありますが、株式市場は貿易摩擦による悪影響を引き締め終了思惑が薄めることとなり好材料として扱われるでしょうし、いっぽうでドル円市場は株式市場の動きをリスクオンとしてドル買いに動く動きと、金利差拡大停止によるドル売りに動く動きとで相殺され、当面はもみあい相場を継続しやすいと言う状況にあると考えられます。

■英国メイ首相とユンケル欧州委員長の会談

昨夜の会談を前にして、既にポンドは買いが強まる動きを見せていましたが、昨日は対円でも一時145円台乗せと年初来高値を更新する動きとなりました。

ここに至るまで英国議会は迷走を続けてきましたが、最終的にアイルランドと北アイルランドとの国境問題が解決するまで英国全体がEUの関税同盟に残ると言う条項に期限を明確に定めるといった変更を加えることを条件として離脱に合意するという方針で再協議を行うという状況が現在進行形です。

前回の協議ではEU側が再協議をしないとのこれまでの方針に変化は見られなかったものの、協議自体は建設的な競技となったとの発言があった上での昨日の協議でしたから、市場参加者としては再協議での合意に期待してポンドに買いが入ってきたこととなります。しかし、昨日の協議でも合意には至らず2月中に再度協議を行うとの報道が公式なものです。

しかし、スペイン外相は修正合意に達する見込みであると発言し、双方の譲歩が必要かもしれませんが、今月中に合意に至る可能性を示唆しました。3月29日期限は変えないということが英国議会の決議ですから、そうであるとすれば、合意に至る残された時間は1か月程度しかありません。

合意の可能性が高いと見るが故のポンド高ですが、実際に結果を見るまでは万が一の合意なき離脱の可能性もあるわけで、現段階で積極的にポンドを買うのはギャンブルの要素も大きいと思います。また一昨日の日経新聞にホンダの英国からの撤退という記事が出ていましたが、これまでも今後も英国から大陸へと本社機能を移転する企業は相当数に上ります。

今は一時的にポンド買いが主流となっていますが、年初来安値からのN波動で上昇していると考えると、50%エクスパンションにあたる146円台後半がいいところではないかと個人的には見ています。

長期的には合意ありのブレグジットであったとしても、ポンド没落相場のスタートとなるリスクも大きく注意が必要です。ポンドは動きが出る時には値幅も大きく殺人通貨とも呼ばれます。どちらのポジションを持つにせよ、ストップオーダーを置き、しっかりとしたリスク管理が望まれることだけは間違いありません。